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筋トレに学ぶ足腰の弱った老犬の食事とお散歩のコツ

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犬に鍼治療をしていると、足腰の弱ったワンちゃんや椎間板ヘルニアの犬の食事についてのご相談を受けます。

単純に考えれば弱った関節の材料を足せば良いと思いますよね?自分が四十肩の痛みや腰痛を筋トレと食事で改善させた中で、弱った犬の足腰を元気にするためには、

 筋肉や関節の材料を足すだけではなく、弱った内臓、特に胃腸のフォローが必要なことに気づきました。今回は足腰の弱った犬の食事とお散歩のコツについてのお話です。

 

 

老犬の足腰が弱るということ

 

まず人の関節のトラブルについて考えます。肩こりや四十肩は「肩の関節」、腰痛は腰の関節に問題があると思いがちです。しかし、肩や腰を支える筋肉が足りない、あるいは筋力が無いから姿勢が悪く肩や腰に負担をかけているのです。

 

人間では40歳を超えると1年間に1%ずつ筋肉が衰えていくと言われています。犬に当てはめれば5−6歳を越えたあたりから筋肉の衰えが始まります。

 

犬が年老いて関節を支える筋肉が落ちると、関節の軟骨やじん帯に負担がかかってトラブルが増えるのです。

 

足腰が弱った犬に関節のサプリメントがすすめられますが、筋力も足りないのですから筋肉の材料が必要です。また、人で筋肉を増やすためには筋トレが必要なように、犬では散歩を中心とした適度な運動が必要です。

 

最後に、老犬になると食べたものを身につける力が落ちます。食事を消化する手助けをしてあげないと、関節や筋肉の材料を足しても身にならないのです。

 

以上のポイントをまとめると、
・老化による足腰のトラブルは筋力の低下が大きな要因
・筋力が落ちると関節や腱、じん帯も傷つきやすくなる
・足腰のトラブルの回復には運動や関節のリハビリを考える必要もある
・老犬は食べたものを身につける力も落ちている

それでは足腰の弱ったワンコに対する対策を考えていきます。

 

胃腸を元気に、体の痛みを緩和する 


肩こりや腰痛の改善には筋トレが良いですよと言われると、皆さんいきなり筋トレを始めます。三日坊主確定です。体を動かす準備ができていないので、下手をするとトラブルを悪化させてしまう始末。

 

同じように、足腰が弱ったワンコをいきなりしごいてはいけません。ゆっくり優しく始めましょう。まずは筋トレの前に内臓から立て直します

 

弱った胃腸を元気にする ー 甘酒


前回の記事では、犬と甘酒のお話をしました。

 

米とコウジだけで作られた甘酒は、
・デンプンがブドウ糖に分解されているのですぐにエネルギーになる
・疲労回復に必要なビタミンB群が豊富に含まれている
・タンパク質がアミノ酸にまで分解されており、傷ついた場所の修理に最適
・コウジ酸がタンパク質の修理を邪魔するAGE(※)の産生を抑える
・コウジ菌が作った消化酵素をタップリ含んでいる
(※AGE=老化の原因となる糖タンパク質の最終形態)

 

甘酒は足腰が弱った老犬が頑張るためのエネルギー補給に最適な飲み物です。そして、筋肉や関節の材料を足したときに、老犬がそれらを消化する手助けとなる消化酵素を豊富に含んでいることが甘酒を使う一番のメリットです

 

また、運動をした後に筋肉を増やすためにはタンパク質だけではなく一緒にブドウ糖も取ると効率的であることが筋力トレーニングの研究でわかっています。

 

弱った胃腸を元気にし、筋力をつける手助けのエネルギー源として、甘酒からスタートしましょう。

 

<甘酒の分量>
5kgのワンちゃんで1日大さじ1杯程度


犬の食欲が落ちているようなら倍くらいまで増やしましょう。

d-monkey.hatenablog.com

 

胃腸を元気にして関節の痛みを緩和する ー 生姜


甘酒は消化を助けてエネルギーを補ってくれますが、足腰に痛みがあるワンコの食事にはもうひと手間加えます。すりおろした生姜を食事に加えるのです。


生姜には、
・胃の循環を良くして食欲を改善する
・体の痛みを緩和する
大きくこの2つの効果があります。関節痛などの炎症を抑える成分は、ジンゲロールと呼ばれています。

 

<生姜の分量>
体重5kgで小さじ1/4(すりおろした生の生姜)
小さじ1/8(乾燥させた粉)
を食事に加えます

 

:体が温める効果が強いので、
・胃炎があって胃が痛い
・炎症がありひどく熱を持っている場所がある
・出血しやすい病気がある
こういう場合は生姜の使用を避けます。

 

狙ったような甘酒と生姜のセット

糀の甘酒500ml×12本と粉生姜セット 無添加 樽の味
 

 

 

次は関節の修理

 

次は筋トレを・・・と言いたいところですが、次に行うことは関節の修理です。

 

足腰の弱った犬に軟骨をあげよう


薬膳では「弱っている場所を食べましょう」というシンプルな教えがあります。

犬の関節のトラブルには軟骨を食べよう!という話は、カリフォルニア大学デービス校の名誉教授、Donald R.Strombeck獣医師の書かれた「Home Prepared Dog & Cat Diets」という本にあります。


P247 Management of Osteoarthritis
Dogs with moderate osteoarthritis causing clinical signs of lameness for four to five months have improved dramatically with cartilage supplementation.
軽度の関節炎があって足をかばっている犬に、4から5ヶ月ほど軟骨を与え続けると劇的に症状の改善がみられます。

 

関節のサプリメントの成分で有名なコンドロイチンやグルコサミンの原材料は、実はサメの軟骨や豚の軟骨だったりします。

 

サプリメントをわざわざ買わなくても軟骨をあげれば一件落着です。焼き鳥用の軟骨が比較的手に入りやすいですね。海外のサイトでは牛の気管を犬にすすめています。

 

犬のウンチが固くならない程度に適宜与えます。

 

牛の喉の軟骨、ハモみたいに細かく切れ目が入れてあるそうです。珍味!?

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軟骨の意外な効果 腸のデトックス


実は食べた軟骨の半分くらいは消化吸収されずに腸の中のを流れていきます。しかし、この吸収されない残りの半分が腸の中の毒素をお掃除してくれます

 

実は、腸の中にたまっている毒素は腸を不安定にしたり腸で炎症を起こし、関節を含めた体のあちこちで病気を起こすことが知られています

 

軟骨は関節の修理の材料となるだけではなく、関節の病気予防のために腸のお掃除をしてくれるスグレモノ食材なのです。

 

筋肉を取り戻す、消化の良いタンパク源とバランスの良い食事

 

軟骨を食べて関節の違和感が減ってきたところで筋肉を取り戻しましょう。筋トレをしてお肉をモリモリ食べたいところですが、どちらも老犬には無理な話です。

 

足腰の弱った老犬では、消化の良いタンパク質・脂質・糖質をバランスよく食べ、消化を助けるために消化酵素を含んだ食材と一緒に食べることが筋肉を取り戻すポイントです。

 

消化の良いタンパク源とは?


消化の良く、高齢の犬に良いタンパク源は何でしょう?

・卵
・白身魚 = タラや鮭
・必須脂肪酸の多い魚 イワシやサバ
・白いお肉 鶏やウサギ

赤い肉は関節に炎症を起こしやすいので避けた方が良いと言われています。(アラキドン酸と呼ばれる炎症を起こす物質が出来やすいため)赤みの肉が、というより赤身の肉の油が悪いと私は考えています。

 

これらのタンパク源を消化しやすく工夫してワンちゃんに与えます。卵は半熟卵であげるとタンパク質の消化が良く、黄身の栄養を余さずワンちゃんが利用できます。体重5kgの一日1/3個程度です。

 

お肉とお魚と甘酒

 

体に良いタンパク源を効率良く老犬に吸収してもらうためには、

・甘酒やコウジにつけて
・よく煮込んで
・細かく刻んで
胃腸の負担が減るように手を加えてあげましょう。調理をさぼって甘酒をふりかけるだけでも犬は大喜びです。

 

胃腸を立て直すところでもお話しましたが、甘酒を使うメリットは、
・タンパク質を消化するために必要なエネルギー源となるブドウ糖を含んでいる
・老化で筋肉の分解が進むのを、アミノ酸が防いでくれる
・老化をコウジ酸が防いでくれる
・サプリメントの原料になるくらいコウジ菌が消化酵素をたくさん含んでいる
上手に利用します。

タンパク源に鮭やイワシ、サバを使うメリットは
・脳や神経の老化を防ぐEPA、DHAが豊富
・EPAやDHがは犬の関節にもメリットが多い
・赤身の肉のように炎症を起こしにくい

大さじ2杯を週に2回はあげたいところです。

 

犬が喜ぶ食材を見つけて、上手に使いましょう。

 

食事で気をつけたいポイント

 

食材以外に、老犬の食事で気をつけたいことがあります。

 

胃腸を休めるときはしっかり休める

 

オヤツなどの間食をちょこちょこ与えていると、胃腸が休む暇がありません。オヤツというと「ジャーキー」や「クッキー」など乾燥したものをあげている方が多いと思いますが、乾物は胃腸に負担をかけます

(私は本当に胃の弱いのですが、オヤツに乾燥したものをちょこちょこ食べていると、胃腸が疲れ、大切な食事がしっかり食べられなくなります。実体験として強く申し上げておきます。乾物は胃腸が疲れます)

 

余計なオヤツは控えましょう

 

筋肉と関節を刺激するーお散歩とリハビリ

筋肉は刺激をしないと加齢とともに衰えていきます。関節を修理するためには関節を動かして修理の材料が補充されやすくする必要があります。 

 

筋肉を刺激する 1回の長い散歩より、3回の短いお散歩

 

足腰が弱ったワンちゃんが関節を元気にし筋肉を取り戻すために、まずはお散歩について考えてみましょう。

 

人が筋トレをして筋肉をつけようとする場合、たいてい一つのメニューを2−3セットこなします。
1セット目で筋肉を温めて怪我を予防し、
2セット目で筋肉を刺激して筋肉の増量を促します。
もうひと頑張りできるようなら3セット目でさらに筋肉を追い込んで筋肉の増量を目指すのです。

 

犬のお散歩でも似たような考えができます。足腰が弱ったワンちゃんの散歩のポイントについて考えてみましょう。

 

・1回の散歩の距離を短めにすることで、疲れて怪我する機会を減らす
・1回目の散歩で体を温め、2回目、3回目の散歩で筋肉を刺激する
・犬に余裕ができたら少しずつ散歩の距離を伸ばしていく

 

筋トレでいきなり腹筋を20回やるのではなく、まずは5回を2セット、できるようになったら7回を3セット、10回を3セットできるようになったら20回まで徐々に回数を増やす・・・、そんなイメージで、ゆっくりじっくり回数と距離を増やします。

 

筋肉を強化するには休息も大切です。老犬では特に休息が必要なので、
・犬が疲れているときは無理せず散歩はお休み
・毎日3回きっちり散歩を頑張るのではなく、3〜4日に1回だけ頑張る日を作る

犬それぞれ年齢や体力によってどの程度の休息が必要なのか、どの程度頑張れるのかは変わってきます。

 

筋トレで同じメニューばかりしていると飽きてきます。

脳も筋肉も同じ刺激が続くとだれてしまうので、
・芝生の公園や小さい山やなだらかな坂など、足の裏や筋肉に適度な刺激を与えるコースを選ぶ
・新しい場所、新しい散歩コースを積極的に楽しむ

毎日同じコースをパトロールすることが大好きな犬もいるので、そこは適宜調節してください。

 

体がうまく動かないときは関節をぐるぐる リハビリの重要性

 

こちらの動画をみてください。少しずつ関節を動かし、体を動かす練習をしています。

www.facebook.com

 

自分で足腰を動かせなくても、動く部分を少しずつぐるぐる動かすことで筋肉や脳に刺激が伝わります。

 

少しずつ足を着く練習をし、ちょっとずつ関節を動かして刺激していきます。関節はグルグル動かされることで関節液に流れが生まれ、修理の材料が運び込まれます

 

動きが硬くなってしまった老犬ではリハビリも大切です。

 

自分で愛犬の関節をグルグルすることが難しいと感じたら、犬のリハビリが得意な獣医さんに相談しましょう。

 

まとめ


自分の肩や足腰が弱ってきたときにそれを救ってくれたのは、筋力トレーニングと、関節と筋肉を元気にする食事でした。
胃腸が弱い私の筋トレのポイントは、
・肉をモリモリ食べるのではなく、消化の良い食事をきちんと食べる
・間食はしない
・まずは関節をぐるぐる簡単な運動から
・痛みが取れたら2−3セットの筋肉を刺激する運動をこなす

足腰の弱った犬でも同じように考えて、無理せずゆっくり回復を助ける必要があります。
・弱った胃腸を立て直しエネルギーを補う
・傷んだ関節の修理を助けるために軟骨をポリポリ
・消化の良い食事と楽しいお散歩

犬と一緒に楽しいお散歩をちょこちょこと刺激的に、おなかがすいたら美味しい食事を一緒にワイワイと楽しみましょう。