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ヒゲ犬先生がつづる犬の健康ブログ

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やせたらアチコチ治ったよ。犬の肥満とプチ断食について

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あじな動物病院の中西です。子犬の頃から拝見していたポメラニアンのペルちゃん(仮)が皮膚病になって来院しました。体重が7kgだったはずなのに、久しぶりに合ったらなんと10kgオーバー。今回は、ダイエットを頑張ったペルちゃんが、やせたらいろいろ治ったよ!という一例と、とても簡単な犬の「プチ断食」をご紹介します。

 

肥満と病気〜ペルちゃんの場合〜

 ペルちゃんは7歳のポメラニアンの女の子。蝶よ花よと家族に可愛がられております。生後4ヶ月の頃からのお付き合いです。

 カルテを見ると2歳の頃のペルちゃんは7kgでした。2020年の5月、内またに皮膚炎が見つけたと来院されたのですが、体重がなんと10kgに。皮ふ炎だけではなく、両方の耳が慢性の外耳炎でふさがりかけ、膝は関節炎で悲鳴をあげてほとんど歩きません。

 

「ほとんど抱っこで移動しています。」

 

あらあら、どうしましょう・・・。

 

どうして太ったの?

 皮ふと耳と膝の治療を始める前に、不調の根源である太った原因を聞きました。飼い主さん曰く、

「お母さんがご飯とオヤツをすぐに忘れてしまうんです。気づいたらものすごく太っていました。」

ここから対策を立てていかねばなりません。お婆さまがオヤツをあげたい気持ちを尊重するために、

1,オヤツを小さく刻んで「これをあげてね」と渡してもらう
2,1日に決まった量を決まった容器に入れておく
3、食事の管理はお婆さまではなくお母さまがやる

まずは余分なオヤツを管理します。さて本格的なダイエットのスタートです。

 

とっても簡単なダイエット〜プチ断食〜

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さてお母さまには、ダイエットの実際の方法をお伝えします。

ペルちゃんは食事を1日に2回食べています。

1 まずは1ヶ月、週に1回だけ1食抜く
2 翌月から週に2日、1日1食の日を作る

やることはこれだけです。とても簡単だと思いませんか?食事を変える必要も、カロリー計算する必要もありません。

食事を抜くなんて耐えられない!(犬、あるいは飼い主さんが)ときは、1食抜くかわりにスープに置き換えてみましょう。ボーンブロスがおすすめです。

youtu.be

 

 動画の中のアップルサイダービネガー

 

 

プチ断食と食事制限の違い

普通、犬をダイエットさせようとするときは、
・1回の食事の量を減らす
・ダイエット用の食物繊維が多くカロリーの少ない食事にする
など、「カロリー制限」をします。

プチ断食でも、1日2回の食事を1週間で2回抜くと、12/14=約14.3%ほど1週間当たりのカロリーが少なくなる計算です。

しかし、毎日のカロリーが減るのと、定期的に食事を抜く方法では、結果に大きな違いがあります。

食事制限:毎日のご飯が少ないので、絶えず空腹感がある。やせるとともに筋肉が一緒に落ちる。

プチ断食:食事を抜くとき以外は、しっかり食べられる。脂肪が優先的に落ちる、筋肉は落ちにくい。

食事制限では筋肉が落ちて基礎代謝が下がるため、ダイエットが進むと途中からやせにくくなります。

一方、プチ断食では、脂肪が落ちても筋肉は落ちにくい傾向があります。基礎代謝が下がりにくく、ダイエットの効果が継続しやすいのがプチ断食のメリットです。しかも、やせても筋肉が残っており、どんどん動きが機敏になります。

 

肥満と病気

 肥満が実はさまざまな病気を引き起こす根源となっていることがわかっています。

・肥満は脂肪を蓄える反応が延々と続いている=炎症が絶えず体の中に起きている状態
・体脂肪以外でも炎症が起こりやすくなる
・一定以上太ると、「体を修理する遺伝子」が働きにくくなる。

この3つの要因により、様々な病気の引き金になり、病気を治りにくくするのが「肥満」なのです。

 

どんどん良くなる

 さて、ペルちゃんに話を戻しましょう。皮膚、耳、膝の治療をしていたペルちゃんですが、最初の4ヶ月ほどは一進一退を繰り返していました。しかし、飼い主さんが本腰を入れてダイエットを初めて痩せていくうちに、まずは内股の皮膚炎が消えてました。次に右耳が完治。体重が1kg減ったところで左耳もきれいになりました。

 皮膚や耳の治療を邪魔していたのが「肥満」であれば、皮膚「炎」や外耳「炎」など、炎症を起こす引き金になったのも「肥満」だったのです。

 ダイエットを初めて半年ほどで体重が1.5kg減少。膝の調子も良くなり、受け付けでクルクル回るほどになりました。飼い主さんの頑張りが素晴らしい結果を生んだ一例です。

 愛犬が太ってしまったら、炎症やトラブルが増える前にプチ断食をオススメします。

 

おさらい

肥満は万病のもと、無理せず犬がやせられる「プチ断食」をおさらいします。

1日2食、週に14回食事を犬にあげているなら、
1,最初の1ヶ月、週に1回食事を抜く
2,翌月から週に2回、食事を抜く(1日1食の日を2日作る)

健康な犬でも、おなかを休めると元気な体作りに役立ちます。週に1食ていど、スープに置き換えて胃腸を休めてみましょう。食べない時間が、体の修理を促進します。

「肥満って怖いな」と感じてもらい、健康に役立つ「プチ断食」について知っていただけたら幸いです。