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犬の腸活、善玉菌を味方につけて犬を元気にする秘訣

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こんにちは、廿日市のあじな動物病院の中西です。愛犬が下痢をすると気になるおなかの菌。胃腸を元気にするだけではなく、アトピーやアレルギーの症状の緩和、解毒に精神の安定など、健康や病気の予防に役立つと言われるおなかの善玉菌ですが、どういう風に犬の役に立っているのでしょう?この記事では犬の健康にとても大切なおなかの善玉菌・犬の腸活についてご紹介いたします。

 

犬のおなかの善玉菌の役割とは?


健康のためには「腸活」を!と言われますが、そもそもおなかにいる善玉菌は何をしているのでしょう?

 

人で500兆〜1000兆個はいると言われているおなかの菌。500〜1000種類は住んでいると見積もられています。この中で、体に良い影響を与えてくれる菌達を私たちは「善玉菌」と呼んでいます。

 

善玉菌の主な役割は、
・犬に役立つ栄養を作ってくれる(短鎖脂肪酸、ビタミンなど)
・悪玉菌の増殖をおさえてくれる
・腸の粘膜や粘液の分泌を盛んにしてくれる(腸を元気にする)
・犬の体と協力して外敵の侵入を防ぐ

犬が健康でいるためには、おなかの善玉菌との協力がとても大切です。しかし一つ疑問が湧きます。なぜ、善玉菌は人や犬のためにこんなに頑張っているのでしょう?

 

「善玉菌が生き抜くため」

 

・犬のゴハンが善玉菌のゴハンです。犬のゴハンから栄養をもらい、そこから犬に必要な栄誉を作り、犬には元気に動いてもらう。自分たちのゴハンを獲得するために、犬のためにせっせと栄養を作るのです。

・犬のために悪玉菌や病気を起こす悪い菌の増殖を抑えている・・・わけではなく、自分たちがたくさん増えるために、病原菌をおさえる物質を作っています。

・自分たちの「快適な住居」として、腸を元気にする手助けをしています。

・犬が体を守る細胞ー免疫細胞と連絡を取り合って外敵を防ぐ。善玉菌が安住の地を得るために他の悪い菌をおさえることが、犬にとっての外敵を防ぐ役目も果たしています。

 

善玉菌は、自分たちが生き抜くために必死でおなかの中で頑張っているのです。

 

ちなみに善玉菌とおなかの中で生存競争をしているのは、日和見菌と悪玉菌と呼ばれる菌達です。

 

「悪玉菌」は、自分たちが増殖できれば犬の健康はどうでも良い、増えすぎると害にさえなってしまう菌。

 

「日和見菌」は犬の役には立たないけれど、害にもならない。どっちつかずの菌です。善玉菌が増えれば善玉菌の味方を、悪玉菌が増えれば悪玉菌の味方をすることがあります。

 

ここで注意したいことがあります。犬にとって良いか悪いかで善玉・悪玉と呼んでいますが、善玉菌が悪玉菌のゴハンを作っていたり、善玉と悪玉が協力して頑張っていることがあるのです。

 

おなかの健康、腸活にとって大切なことは、1種類1種類の菌で考えるのではなく、

「おなかの菌のバランスを大切にする」

ことが、善玉菌を増やし、犬の健康を保つためには大切なのです。

 


おなかの善玉菌を元気にするには

 

おなかの仲間たち、腸内細菌を元気にするためにはどうすれば良いのでしょう?まずはどんな菌がおなかにいるのか調べてみましょう。

 

愛犬のおなかの菌のバランスを調べてみよう


おなかの菌のバランスを調べる検査が、こちらからキットを取り寄せることで可能です。

https://www.aponline-shop.com/products/detail.php?product_id=255

 


我が家の二頭のウンチにいる菌を調査

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同じ犬種、同じ生活環境、同じ食事にも関わらず全く菌のバランスが違います

 

実はおなかの菌のバランスは、生まれた時に母犬からどんな菌をもらったかと、その犬の持って生まれた個性(腸内の環境によってどんな菌が住みやすいか、遺伝的な素因)で、持っている腸内細菌が違います。

 

「これは犬のおなかに良い菌です!」といって「ある菌」を犬にあげても、犬によって効果があったり無かったりするのです。

 

おなかに良いサプリメントを追い求めるより、愛犬が今持っている腸内細菌を元気にするにはどうしたら良いか?を考えることがとても大切です。

 

犬の善玉菌のゴハンってなんだろう?

 

次に、おなかの善玉菌のゴハンについて考えてみましょう。

 

犬の腸内細菌のゴハンは、犬が食べた食事です。人の研究では、腸の善玉菌に必要なのは食物繊維で、野菜をしっかりとること、特に発酵野菜が重要であることがわかっています。ぬか漬けやキムチ、ザワークラウトなどですね。犬ではどうなのでしょう?

 

ちょっと極端な例ですが、犬において一般的なドッグフード(穀物と肉が主体)の食事から、穀物の入っていない生肉が主体の食事に切り替えたところ、効率よく消化ができおなかの菌のバランスが劇的に変化したという論文があります(参考文献1)

 

ここで言いたいのは、生肉が良い・・・ということではなく、消化が良く、体に合った食事にすることで、おなかの菌のバランスが劇的に変化するということです。

 

「犬」とひとくくりで食事や健康について考えてしまいがちですが、

・狩りのお供をしていた猟犬
・お城や宮廷で可愛がられていた愛玩犬
・家や畑・家畜を守っていた番犬


犬種やお国柄によって、犬が食べているゴハンは全く違います。腸内細菌は、母犬の持っていたおなかの菌のバランスと、遺伝の影響を強く受けます。つまり、愛犬のご先祖さまがどんな暮らしをして何を食べてきたか、その犬種や暮らしてきた国によって、腸内細菌のバランスに大きな違いがあると推測されます。

 

私の経験でも、よく煮込んだ白米の入った食事をとらないと体重を維持できない犬や、生肉を食べないと下痢が治らない大型犬、ある一種類のドライフードしかおなかに合わない犬など、犬種・年齢・家系などによって、その犬によってベストな食事はさまざまです。

 

私の憶測ですが、

・狩猟犬は、狩りの獲物の一部をもらっていた可能性が高く「肉食系」の食事をおなかの菌が喜ぶ可能性が高い。獲物の内臓を食べることで、消化管の中で発酵した植物と善玉菌を一緒に摂っていたと推測される。
・ペットとして可愛がられてきた小型犬は、人と同じの食事を先祖代々食べてきた。食事からくる善玉菌も、その国・その地域の発酵食品を一緒にもらっていたと推測。ヨーロッパの犬種ならばチーズやヨーグルト、ザワークラウトなど。

・上記の推測をもとにすると日本在来の犬は、納豆・味噌などが発酵食品としては体に合うかもしれない。

 

愛犬のご先祖様がどんな食事をしてきたかを想像して犬の食事を考えると、腸内細菌が喜ぶ食事がわかるかもしれません。

 

視点を変えて、おなかの善玉菌が喜ぶ食事について共通するポイントを考えてみましょう。


・犬がしっかり消化できる質の良い食事をとる
 (消化がうまくできていない食事は悪玉菌のエサになると言われている)
・善玉菌の食事となる食物繊維を意識する
 (生が良いか、調理したものが良いか、発酵したものが良いかは食べさせてみてウンチから判断)


腸の環境が良い、善玉菌が元気なときは、ツヤツヤのウンチがするりと出ます。それでは犬とおなかの善玉菌を元気にする方法をを実際に見ていきましょう。

 

犬のおなかと善玉菌を元気にする方法

 

善玉菌を元気にする生活スタイル

食事のオンとオフ、間食を控える


おなかの善玉菌が元気でいるために大切なことの第一は、食べた食事を犬がしっかりと消化できることです。犬が食べた食事をうまく消化できないと、それは「悪玉菌」のゴハンになります。

・質が良くおなかに負担をかけない消化の良い食事
・食事のリズムを一定にする
・オヤツはほどほどに

 

散歩や遊び、適度な運動


適度な運動をすると、腸の動きが活発になり、元気なウンチがポンポン出ます。おなか人も犬も、発散をしてストレスをためないことが、おなかの善玉菌も元気にする秘訣です。

 

もう一つ、大切なことがあります。

 

腸内細菌のなかに、土にいる細菌と同じ仲間がたくさんいることが知られています。野生動物は、土から塩分やミネラル、そして体に有用な菌を補給していることからも、土に触れるということはとても大切なのです。

 

ストレスの発散の他にも、外で遊び、土と触れ合うことが腸内細菌の維持に役立っている可能性「大」

 

土の上、草の上を転げ回り、遊ぶ機会を作りましょう。

 

自然の水を飲みましょう


水道水には徹底的に菌を追い出すために「塩素」が大量に含まれています。体に良いも悪いも関係なく、菌を全て殺してしまいます。塩素を含まない天然水の中で、ワンちゃんが喜ぶおいしい水を選び、毎日タップリ与えましょう。

 

向かいのスーパーで手に入る硬度の低い天然水

サントリー 天然水 奥大山 2L×10本

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善玉菌を元気にするオススメの食材

 

ヤギミルク


腸の善玉菌が喜ぶ栄養に「オリゴ糖」があります。オリゴ糖を豊富に含む食材は、ゴボウ、大豆、タマネギ、ニンニクなど。しかし犬にはあげにくい、あるいは与えてはいけない食材ばかり。

 

そこでオススメしたいのが、オリゴ糖を豊富に含み犬もおなかの善玉菌も喜ぶ「ヤギミルク」。

 

ヤギミルクは
・オリゴ糖を豊富に含む(善玉菌が大喜びのゴハン)
・牛乳にアレルギーを起こしやすいガゼインというタンパクが少ない(アレルギーが出にくい)
・牛乳のように乳糖不耐による下痢を起こしにくい
・中鎖脂肪酸を豊富に含み、ココナッツオイルのようにすぐに燃えてエネルギーにかわりやすい

おなかの善玉菌にも犬にもとても良い食材といえます。 

 

 

牛や羊の胃袋(トライプ)

狩りのお供をしていた狩猟犬などは、草食動物の内臓から、発酵した草と発酵を助ける菌を食べていた可能性が高いとお話しました。

 

しかし、犬のおなかの善玉菌のために牛や羊の内臓を食事にあげましょう!といってもなかなかに難しい話です。

 

便利なもので犬と暮らす文化が進んでいる海外では、犬の食事に加える胃袋(トライプ)が、あげやすいフリーズドライの形で販売されています。

 実際に、どうしても強い薬を使いたくないという特殊な下痢が続くワンちゃんに、K9のトライプを与えてもらったところ、下痢が改善する経験を私も何度かしています。犬に気軽にあげられるオヤツ、かつ腸が超元気になるオススメの一品です。

 

発酵野菜

 

草食動物の内臓に抵抗があるときは、発酵野菜を検討してみます。ドイツならザワークラウトなのでしょうが、日本のぬか漬けでは塩分や香辛料が強く、犬には向きません。海外の皆さんは自分で犬用の発酵野菜を用意するようです。

 

http://www.dogsnaturallymagazine.com/6-best-probiotics-for-dogs/
https://animalwellnessmagazine.com/fermented-foods-good-dogs/

 

日本の多湿気候で発酵野菜を自作すると、腐敗する危険性がなかなかに高いので、注意が必要かと思われますが。

 

日本食で犬に安全な発酵食品は、納豆、砂糖やアルコールを添加していないお米と麹だけで作った甘酒、味噌などですね。

 

発酵食品

発酵食品は、ヨーグルト、チーズなどです。牛乳が合わない犬もいるため、豆乳のヨーグルト、ケフィア水なども検討の余地ありです。

 

季節の野菜・果物


おなかの善玉菌が喜ぶ食物線維を取るために、野菜や果物を犬にあげることはとても大切です。

 

・解毒を助ける(特に肉食中心の食事のとき)
・肉では不足する食物繊維、ビタミン、ミネラルを補う
・体が錆びてしまう「酸化」を防ぐ「抗酸化物質」をもらう

 

何をあげたら良いの?と思われるかもしれませんが、

穀物源:白米、玄米、ソバ、オートミール、はと麦、雑穀、キヌア
でんぷん質の野菜:カボチャ、サツマイモ、ニンジン、ジャガイモ、カブ、ダイコン
野菜:アスパラ、パプリカ、ニガウリ、チンゲンサイ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、キュウリ、
 ケール、もやし、きのこ、パセリ、ズッキーニ、ほうれん草、トマト、さやいんげん、ブロッコリースプラウト

などなど、季節の旬の栄養タップリな野菜を、ワンコと一緒に楽しみましょう。消化のことを考えると、栄養を逃さず加熱ができる「蒸し野菜」がオススメです。でんぷん質の野菜・根菜は、煮込んだりしっかりと加熱することが消化のためには大切です。

 

どの野菜をあげるか悩んでしまうときは、βカロテンのとれるすりおろしニンジンと、消化を助けるキャベツやブロッコリー、発芽したばかりで栄養の吸収しやすいブロッコリースプラウトから始めましょう。

 

それぞれの野菜の特徴はこちら

d-monkey.hatenablog.com

 

 

ちなみに善玉菌のゴハンとしてオススメのサプリメントはこちらのアニマストラス。

アニマストラスL 250ml

アニマストラスL 250ml

 

 ハーブを酵母菌が発酵してできた製品です。βグルカン、核酸、ビタミン、アミノ酸を豊富に含み、犬の免疫アップと善玉菌の元気を応援する一品。ブリーダーさんや飼い主さん、さまざまな方面から良い評判を耳にします。


まとめ

 

犬のおなかの善玉菌を元気にする方法を見ていきました。


ポイントは
・犬と善玉菌の喜ぶ消化の良い食物線維のとれる食事
・散歩や遊びでしっかり発散
・キレイなお水
・草食動物の胃袋や発酵野菜、発酵食品を意識する

 

腸の元気は犬の元気、元気な犬には元気な善玉菌。愛犬と暮らすことは、愛犬のおなかの仲間たちとも仲良くすることです。善玉菌の喜ぶ食事を意識してみましょう。

 


犬の胃腸の負担が少ない、愛犬がマッチョになるニュージーランドのスーパー犬ゴハン 

 


参考文献

1,Raw meat based diet influences fecal microbiome and end product of fermentation in healthy dogs. Misa Sandri et al. BMC Veterinary ResearchBMC series – open, inclusive and trusted 2017

2,Understanding the canine intestinal microbiota and its modification by pro‐, pre‐ and synbiotics – what is the evidence? Silke Schmitz, ,Jan Suchodolski. Veterinary Medicine and Science volume2, Issue2 May 2016

病気にならない乳酸菌生活 著:藤田紘一郎 PHP文庫

あなたの体は9割が細菌:微生物の生態系が崩れはじめた 著:アランナ・コリン 河出書房新書

「腸の力」であなたは変わる:一生病気にならない、脳と体が強くなる食事法 著:デイビッドパールマター 三笠書房