こんにちは。足元ヒーターが欠かせないあじな動物病院の中西です。
今回は足の裏が赤くていつもペロペロ舐めている犬のために、フットケアとしての「足湯」をご紹介します。簡単なものから、一緒につかるお風呂まで6種のケアをご用意しました。
足湯ケアをしても改善しないときは、「病気」の可能性が大。是非、最後まで読んでください。
犬が足の裏(肉球)を舐めるのはなぜ?
犬は「裸足」で外に散歩に行きます。足の裏にたくさんの「刺激物」をつけて帰ってきます。花粉、粉塵、PM2.5、農薬、殺虫剤など、皮膚に害のあるものが地面にはたくさん落ちているんですね。
photo credit: Tambako the Jaguar Wolf licking her paw II via photopin (license)
足の裏に刺激の強い物質が付くと、赤みや痒みが出ます。「これは体に害になるから排除しよう」という体を守る防衛部隊が頑張った結果、足の裏の赤みや痒みです。
犬が足の裏をしきりになめているときは、足の裏に付いた刺激物を飼い主さんがキレイに落としてあげる必要がある、そこで登場するのが足湯というわけです。
足の裏の汗
犬は人のように体に汗をかきませんが、「足の裏」だけ汗をかきます。「エクリン腺」というサラサラの汗が出る腺が足の裏にだけ存在します。
汗が乾燥すると、塩分が結晶になります。この塩気をペロペロと舐めとるのですが、冬場はこの塩分が皮膚への刺激になりやすくなり、気にして足の裏を舐めます。
足の裏の塩分を洗い流して、潤いを保つのが冬の足裏ケアのポイント。
肉球の間のあぶら
皮脂を出すのが「アポクリン腺」。足の裏の皮脂が多いと、肉球の間がべとべとしやすくなります。また皮脂をエサに菌やカビの仲間が繁殖しやすくなるため、皮膚のトラブルが増えます。
指の間、肉球の間がべとべとしている犬では、皮脂をスッキリ洗い流し雑菌の繁殖を抑えることが足裏ケアのポイント。
足裏ケアのポイントまとめ
- 自分の犬の足の裏がカサカサかべとべとか観察する
- 毛が伸びる犬種は、ケアしやすいように足裏の毛をカット
- 散歩で足の裏に付いたものをキレイにする
- 足の裏の乾燥が強い犬はキレイにしたあと保湿
- べとべと足の裏の犬は皮脂をスッキリ洗い流して殺菌
- 足裏をキレイにしながら傷や異物が無いかチェック
決まった足だけ気にするときは、病気や怪我が無いか獣医さんに相談しましょう。
それでは実際の足の裏をケアする、「犬の足湯」講座です。
犬の足裏ケアのための足湯・六湯
足湯は成分によって使う目的が違います。
- 足の裏の潤いを保つ ー オートミール、カモミール
- 血行を良くして不純物を汗から出しやすくする ー エプソム塩
- 足の裏をしっかり殺菌する ー イソジン、アップルサイダービネガー
- 足の裏の汚れをしっかり落とす ー 重曹
足湯に浸かった後は拭き取るだけでOK。洗い流さなくても大丈夫です。
毎日の散歩の後は濡れタオルやウェットティッシュで足の裏をキレイに拭き、足の裏を舐めて気にするときは、足湯で足の裏をスッキリさせてあげましょう。
犬と一緒にオートミール浴(潤い)
肉球がひび割れていたり、カサカサ肌の犬の足の裏にオススメ。オートミールは痒みや敏感肌の炎症を抑えてくれる効果があります。
photo credit: demandaj the clean up via photopin (license)
お風呂の作り方
- お風呂に湯をはる
- 軽量カップ1杯のオートミールをお風呂にイン(ボール茶こしが便利です)
- まずは自分でオートミール浴を楽しむ
- お湯の量を減らして犬が立って足先が浸かる量に調節
- 10分程度犬をお風呂にいてもらう

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効果が弱いと感じるときは、靴下にオートミールを入れてお風呂の中で白い液が染み出すまでよく揉み出しましょう。
一緒にお風呂を楽しむことで、飼い主さんの皮膚もスベスベになりますよ。オートミールは味がついていないオーガニックのものを選びます。
あとに出てくる「重曹」と組み合わせることで、汚れ落としと潤いのW効果、「オートミール重曹浴」も可能です。
イソジンフットバス(殺菌)
ペロペロ舐める足の裏が臭う、べとべとして何か菌やカビがいそう・・・、そんなときは「イソジン」浴です。うがいにも使うイソジンですから、犬が舐めても何の害もありません。
photo credit: Tambako the Jaguar Paw in the water via photopin (license)
イソジンフットバスの方法
- 足先が浸かるバットに手を入れてもアチチとならない温度の湯を入れる
- イソジンを注ぐ(1リットルに大さじ1杯くらい)見た目の色はアイスティー
- 30秒間足を漬ける
- タオルで軽く拭く
抗生物質の飲み薬のように、菌に対して「効かなくなる」ー「耐性」という問題が起きにくいのがイソジンの利点です。
イソジンを使う上での注意点。
- 足の裏についた土とイソジンがくっつくと殺菌力が落ちるので、イソジン液は毎回作る
- 茶色く毛が染まるので、白い毛の犬は要注意(オキシドールで落とせるようですが)
こんな面白いグッズありました。バットで足湯が難しいときにオススメ。
使い方
重曹足湯(汚れ落とし)
ベーキングパウダーとして使われる「重曹」ですが、汚れと臭いを分解し、やんわりと菌を抑える「制菌」作用があります。痒みの元になるアレルゲンを取り除き、痒みや赤みを和らげてくれます。
photo credit: ** RCB ** 2016-06-24 feeding the sourdough via photopin (license)
重曹足湯
- バケツ1杯のお湯に大さじ1−2杯の重曹を入れる
- バットに重曹湯をはる
- 足を1−2分つける(中型犬以上なら足をそのままバケツにドボン)
大切なのは、食用あるいは医療用の重曹を使用してください。安い工業用はNGです。
アップルサイダービネガー浴(殺菌)
菌やカビに対して殺菌作用があるのが「お酢」です。特にアップルサイダービネガーは、舐めても体に良い効果しかありませんので、特に「酵母菌ーマラセチア」が繁殖した足の裏の殺菌にオススメ。
アップルサイダービネガー浴
- バケツ一杯のお湯にアップルサイダービネガーカップ1、オキシドールカップ1
- 出来た湯に足を30秒ひたす
- そのまま風乾する
殺菌効果が強いので、夏におすすめの足湯となります。獣医さんで「マラセチアがいるね」と言われたワンちゃんは是非使ってください。
酢の臭いがきつい、あるいは痒みや赤みが強いときは別のバリエーションもあります。
- バケツ1杯の湯にビネガー1カップ、レモン果汁1個分、ペパーミントのエッセンシャルオイル20滴を加える
- 犬の足を30秒の間、湯にひたす
- 足の水を切って、そのまま風乾
カモミール風呂(痒み止め、潤い)
飲むと胃の炎症を抑えたり気持ちをリラックスさせてくれるカモミールティーですが、スプレーやお風呂で使うとかゆみを抑え、かゆくてイライラした気分を落ち着けてくれます。
カモミールのお風呂
- カモミールティーを人が飲む濃さで数バック分作る
- バットなどの足を浸す容器にお茶を移して30秒浸す
- 足の水を切って、そのまま風乾
お茶が面倒な方は、そのまま使える入浴剤もあります。
犬の足の裏にはカモミールティーだけでなく、様々なハーブティーが使えます。
ペパーミント : 熱を持って痒みが強いとき
ラベンダー : 殺菌力を強めたいとき
緑茶 : カサカサしたフケや湿疹の予防
エキナセア : 風邪の予防に使われる殺菌効果に期待
アップルサイダービネガー浴をすると乾燥しやすいワンちゃんには、カモミールティーや緑茶を加えて、酢による乾燥を抑えると良いですよ。
エプソムソルト足湯
ヨーロッパで広く普及しているエプソムソルトというバスソルト。ワンちゃんの足湯に使うと血行を良くして足の裏から老廃物をドンドン出してくれます。成分の「硫酸マグネシウム」が、足の血行を改善して人のむくみを取ってくれるメカニズムは漢方や入浴剤で有名な「ツムラ」が解明しています。(https://www.bathclin.co.jp/news/2008/0411_788/)
エプソムソルト足湯
- 浴槽にお湯をはり、300gのエプソムソルトを溶かす。
- まず自分でエプソムソルトバスの発汗を体感
- その後湯の量を調節して、犬の足を10分間漬ける
- 足を拭いて終了
他の方法で足の舐め舐めが治らないときに、足の血行を良くして溜まった老廃物を出してあげましょう。
肉球のガサガサ、ヒビ割れがひどいときは?
「足湯」は足の裏が赤いとき、痒いときの方法です。
肉球がヒビ割れて気にしているようなら、肉球のケアが必要です。
簡単ケア 肉球クリーム
傷は「潤い」を逃さないことが早く治る秘訣。肉球のヒビ割れやカサカサも潤いを保つことがプルプルに戻るためには大切です。添加物の入っていない肉球クリームを寝る前にすりこんで、肉球の潤いを保ってあげましょう。
食べる肉球ケア
肉球のヒビ割れや乾燥がひどくなってきているのは老化のせい??確かに年を取ると乾燥しやすくなりますが、足りない栄養素があるとカサカサ・バリバリは加速します。
- 必須脂肪酸
- ビタミンAやビタミンE
- 亜鉛
これらの栄養素をしっかりとることが肉球の元気に必要です。
おすすめはレバー。
週に1回 体重5kgで30gを目安に(1日5g程度まで)、レバーをあげてみましょう。元気な肉球に必要なビタミンや亜鉛を豊富に含んでいます。
それでも肉球や皮膚がカサカサしているときは、「必須脂肪酸」の登場です。
必須脂肪酸の中でもDHAとEPAを合わせて1日100mg〜300mgをフィッシュオイルから取りましょう。吸収の良いクリルオイルもおすすめです。
フィッシュオイル
クリルオイル
それでも足を舐めるときは?
「病気」を考えなければなりません。
獣医師さんの教科書から病気を抜粋すると
- 指間炎、趾間部膿皮症
- 皮膚糸状菌症
- マラセチア症
- 毛包虫症(ニキビダニ)
- アトピー
- 食物過敏症
- 肢端舐性皮膚炎
- ノミ
- 外傷
- 異物(トゲなど)
- 甲状腺機能低下症
- 接触性皮膚炎
- 腫瘍
- 神経障害
ここでは動物病院でも診断がつかないことが多い「神経障害」について詳しくご説明します。
首輪と首の神経の関係
散歩中に車、他の犬、人・・・事故に合わないために必要な「首輪」。
犬が突然何かに目がけて急に走り出したり、飼い主さんがビックリした拍子にグッと急にリードを引っ張ったり・・・、そんな折に首から前足に向かっている神経が傷ついてしまうことがあります。
ちょうど首輪をつけている首の骨の隙間から、肩から腕の感覚を支配している神経が出てきます。首輪がこの神経を傷つけることで、足に違和感を感じて異常になめるケースがとても多いことが近年わかってきました。
残念ながら犬が異常に足を気にしてなめていても、ストレスや暇つぶし、しつけの問題だと言われてしまうことも多く、首から肩の神経の問題の診断と治療には、神経・筋肉・骨格の治療に詳しい獣医師を見つけることが必要です。
飼い主さんに出来るのは「予防」すること。
- 首輪を体に合った胴輪に変えて、首への負担を減らす
- トレーニングを受けて「急発進」しない練習をする

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体にピッタリフィットして、クッション性もある胴輪がオススメです。
首の問題は「前足」に出ますが、「後ろ足」ばかり気にするときは股関節や膝関節、腰に問題を抱えている可能性があります。
ボール拾いやフリスビー、急発進したあとに物をキャッチするスポーツで、足や腰に負担をかけ関節や神経、筋肉やじん帯を痛めると後ろ足を気にするのです。
1ヶ月は急な運動を控え、関節・神経の病気の得意な獣医師の診察を受けましょう。
まとめ
今回は足の裏を舐める犬のための、足裏ケアについてお伝えしました。
カサカサ、ベトベト、赤い、痒い。
あなたが犬の足の裏の状態に合わせた足湯につけて、ワンちゃんの足をスッキリキレイに保ってあげましょう。
足を舐める理由がわからないときは、皮膚病、神経病、両方の得意な獣医師に相談してください。