あじな動物病院の中西です。花粉で目や耳、はてはのどまで痒くてしょんぼりです。2020年の夏、我が家のエルガーが首の椎間板ヘルニアで立てなくなりました。飼い主さんから教えてもらったグッズ達のおかげで、エルガーも私も随分救われました。この記事では、獣医師であり飼い主でもある私が、うまく歩けない犬を介助・リハビリする中で気づいたことをシェアしたいと思います。今まさに愛犬が上手く歩けず、介助・リハビリしている方に、「あ、これ役に立つかも?」と感じていただける情報が一つでもあれば幸いです。エルガー君のリハビリ動画も付いてます。
犬が歩けない・・・、エルガー君の場合
2020年7月のある朝、エルガーが寝ている部屋から突然叫び声が聞こえてきました。部屋に入ると割れた水入れの食器。そして前足をピンと伸ばしてもがく彼の姿。「!?」彼の顔を見た目瞬間に嫌な予感はしていたのですが、検査の結果は「首の椎間板ヘルニア」。
首から下の麻痺により、体温の調節が自分でできず気を抜くと体温が40度をこえてしまいます。首の痛みがひどく、鎮痛剤が切れると泣き叫ぶ、薬が効くと体温が急低下。ここから2週間、寝袋で添い寝しながらの付きっきりの看病でした。体温調節、鎮痛剤注射、定期的におしっこを絞り、痛みが走らないよう体位を変える。
数日すると、痛みが強くなる前に「バウ」と呼ぶ、おしっこしたくなったら「バウ」、体温高くなると「バウ」、二人の呼吸が合うようになってきました。
痛みがおさまるまでに2週間、そこから自力でおしっこできるまでにもう2週間、リハビリを始められるようになったのは一ヶ月ほど経過してからでした。
足につける滑り止め
まずリハビリの第一歩は「立つこと」。
首の麻痺から一ヶ月したエルガー君、筋肉がほとんど無くなってしまい全く体を支えられません。筋肉が無いと前足も後ろ足も滑って開いてしまうのです。
そこで最初に登場したのが 足の裏に貼り付けるシールタイプの滑り止めです。足の裏の毛を刈り、肉球をキレイに拭いて乾かしたあとにペタペタと張っていきます。
足が滑らない準備ができたら、おしっこしそうな時間になったらトイレで体を支えておしっこ練習・・・のハズですが、筋肉がなさすぎて滑らないだけでは全く立てません。何より中腰になることが多く、こちらの腰が持ちません・・・。
歩行補助、介助ハーネス
犬が歩けなくなった飼い主の皆さんが、口を揃えて「腰を痛めました」と言っていたのが見に染みてわかりました。急ぎ介助用のハーネスをamazonで注文です。
歩行補助、介護ハーネスを選びで苦労したこと
体形に合わないと使い物にならない
うちのエルガー君は胴回りのサイズが小型犬とずれていてなかなか苦労しました。小さいサイズは胸が入らない、サイズを大きくするとスカスカでうまく介助できないんです。変に首が絞まったり、背骨が曲がってしまったりします。
面倒がらずにとことん犬のサイズをきちん測りましょう。試着できるお店で買うのが良いですが、サイズが合わなければ交換してくれるネットショップもあります。
歩行補助、介護ハーネスに求めること
飼い主さんの身長に合った持ち手の長さ
自分の腰への負担を減らすには、犬にハーネスをつけて立ち上がったとき自然に持てる長さに調節できるハーネスだと腰への負担がぐっと減ります。ぜひ持ち手の長さにも気をつけると毎日の介助がとても楽になります。
長さ調節可能、しかもサイズ交換OKだとこのあたりの商品。
さあリハビリです・・・ってあれ、動きたくない???
道具をそろえればリハビリが上手くいくかというと、そうは問屋がおろさないのが現実でした。
エルガーの場合、
・動くと激痛が走るという日々が、動こうという意欲を奪ってしまった
・首からの下の筋肉がほとんど無い
・食事、トイレ、移動、全て「バウ」と呼べばパパがやってくれるという学習
これらの要素がリハビリの大きな壁になりました。
「動こうという意欲」をどう高めるか?
エルガーの場合、
去勢していないオス犬なので、メス犬の臭いに超敏感
→犬が集まる公園につれて行き、臭いがする場所へ行こうという意欲を利用
オスの柴やシュナウザーが嫌いで追いかけようとする
→犬がお散歩する時間帯に外へ連れ出してオス犬をロックオンさせる
大好きなオヤツや食事に首を伸ばして食いつこうとする
→リハビリを空腹時にオヤツやゴハンを使う
筋肉が落ちているので、一生懸命食べさせようとしていましたが、ときに「食事を抜く」という判断が、リハビリへのエルガーの意欲を高めてくれました。
椎間板ヘルニアの治療に通っている飼い主さんのお話でも、食事のときは立っている、トイレに行くときだけは少し歩く、という話をよくいただきます。「何をしようとするとき、動く意欲があるか?」というのを拾っていくのもリハビリのポイントです。
プロが犬のリハビリをしている動画を見ていると、頑張ったあとに必ずご褒美をあげています。頑張ったら美味しい・楽しいご褒美をあげてくださいね。
滑らないマット
メス犬を見たり、苦手なオス犬をロックオンすると、足をジタバタさせるエルガー君。外では介助ハーネスで支えてジタバタした彼を地面に乗せると歩く練習ができるようになりました。最初は体重のほとんどをこちらが支えて、徐々にサポートをゆるめて筋肉を取り戻していきます。筋トレと一緒で、ゆっくりじっくり。
屋内のリハビリでは、犬が滑らず程よくクッションの効いている歩きやすいマット選びが極めて重要だとわかりました。足の裏に貼るシールでも「滑らない」という点では一緒なのですが、「転ぶと痛い」んです。エルガー君、痛いのはもう散々なので、痛くない状況でないと動こうとしません。歩ける足場、痛くない足場を彼はよく理解しています。
いろいろと試してリハビリで一番重宝したのは、
ヨガマット
でした。
・滑らない
・転んでも痛くない適度なクッション
・掃除しやすい
・邪魔なときは丸めて部屋の隅
ヨガの不思議なポーズに耐えられるよう、ヨガマットの滑らない作りはピカイチです。適度なクッション性もあり、犬が転んでも安心です。エルガーもヨガマットの上では積極的に歩こうとします。ちょっと良いヨガマットを買うのが失敗しないポイントです。
私がもう12-3年使っていたsuriaのヨガマット、まさかエルガーのリハビリに役立つとは思いませんでした。思い切って2枚目を新調。新旧並べてリハビリに大活躍。
・まっすぐ歩く、障害物越えの練習には縦につなげて
・円歩きの練習は横に並べて
気ままにリハビリ空間を作れるのがヨガマットは良いですね。
肉球に貼るシールと組み合わせるとグリップ力がさらに増します。食事のとき、おトイレの下などにもヨガマットをはじめ、グリップの良いものを敷いて置くとリハビリの効率がアップしますよ。
最後に
無事に苦境を取り越えて歩く姿を見せてくれるエルガー君、散歩ができるというだけで毎日私を元気にしてくれます。生きていてくれてありがとう(泣)
歩き、走り、いつの間にか縁石を飛び上がり、ジャンプが足りず転ぶ、子犬が成長していくような幸せな感覚でエルガーの回復を見守っております。
愛犬のリハビリしている飼い主さん、毎日大変でしょうがコツコツ一緒に頑張っていきましょう!