あじな動物病院の中西です。マルチーズを新しく飼った方から、「涙やけのケアはどうしたら良いですか?」というご質問をいただきました。徹底調査の末に出た結論は、
「犬の涙やけは1日に2回は蒸しタオルで目の周りと顔を拭きましょう」というシンプルなものでした。今回は涙やけのケアとマイボーム腺についてお話しします。
涙やけには蒸しタオル
犬の涙やけは名前の通り、目の内側の毛が涙で茶色に変色してしまう現象です。対応として最初にやることはとてもシンプルです。
1日2回、蒸しタオルで拭く
海外のマルチーズの涙やけケアに関するサイトではもっと強い口調でした。
Hi! マルチーズのオーナーの第一歩は、
毎日1日2回は蒸しタオルで目の周りと顔を拭くことだ!
化学物質や漂白剤を涙やけの拭き取りに使うなYO
涙で毛が変色するならば、問題が起きる前に清潔に維持しましょうということです。いろいろな涙ケア製品も調べた後に、たどりついた結論があまりにシンプルで笑ってしまいました。
蒸しタオルで拭く 3つの理由
ちなみに、「蒸しタオルで拭きましょう」というには3つの理由があります。
1 蒸しタオルを使うことで、涙と汚れが落ちやすく
2 目の周り温め血行を良くする
3 タオルで拭いてマッサージ
目の周りをマッサージし、温まって血行が良くなると犬のマイボーム腺と呼ばれる涙に油膜を作る器官の働きが良くなります(第3章にて詳しくお話します)。
<写真:目の周りを蒸しタオルでじんわり温める>
蒸しタオルで拭くのが難しいなら、最初は純水のコットンで拭きます。慣れてきたら目の周りをマッサージするように拭く練習を。
蒸しタオルやコットンで犬の顔をキレイにしたあとは、忘れずにご褒美をあげましょう!
顔を拭くことを好きになってもらうことは、毎日ケアを続ける上でとても大切です。
毛が茶色くなる理由
涙やけで毛が赤茶色になる理由ですが、
1,涙に含まれるポルフィリンが紫外線で変色
2,涙を餌にバクテリアが繁殖
3,涙に含まれるラクトフェリンが鉄イオンと結合
などなどいくつかの原因が目頭や口の周り、足の裏などの毛を赤茶色に変色させます。
涙やけを減らす5つのポイント
涙やけで毛が赤茶色になる理由を知ったところで、涙やけを減らすポイントをいくつかご紹介します。
キレイな水を用意しましょう
涙やけの原因のひとつにラクトフェリンと「鉄イオン」の話が出てきました。古くなった水道管の錆びを含め、水道水には余計な金属イオン、消毒用の塩素などが含まれています。
犬の飲み水をクリーンでミネラルの少ない地球がろかした天然水の「軟水」に変えることで、涙や汗、尿などに含まれる余計なミネラルを減らしましょう。
キレイな涙はクリーンな水から
重い水は配達してもらうと便利
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プラスチックの食器をやめる
プラスチックの食器を長く使っていると、細かい傷が増えて清潔に保ちにくくなります。涙やけの原因の一つに「バクテリア」が出てきましたが、食器でのバクテリアの繁殖を防ぐために、ガラスや陶器、ステンレスの食器に変えていつもキレイに洗いましょう。
またプラスチックの食器に水を入れっぱなしにしていると、プラスチックから環境ホルモンや化学物質が染み出す可能性が海外では指摘されています。プラスチックにもいろいろな種類があるのでは一概に悪いとは言い切れないのですが、犬に安全な素材に変えてしまった方がスッキリ清潔です。
食器をステンレスかガラスか陶器のものにする
我が家の初代犬は、峠の釜めしの容器でしか水を飲みませんでした。あの容器で飲む水は美味しいんでしょうね。
まめに顔周りをカット・トリミング
目の周りの毛が伸びると涙がそこに長くとどまり、毛が変色しやすくなります。目の周りの毛はこまめにトリミングしてもらいましょう。顔を拭いたりするケアもしやすくなります。
まめにトリミング
質の悪いフードをやめる
防腐剤や着色料などの入ったドッグフードを食べていると、犬の体は一生懸命、体に悪い化学物質を追い出そうとします。涙だけではなく、汗や皮脂、おしっこやウンチから、それはもう一生懸命に排泄します。
犬の、涙は目を守るためにさまざまな酵素やタンパク質を含んでいます。質の良いお肉、タンパク源を使ったフードを食べていないと、質の良い涙を作ることができません。目を守る成分が減ってしまうと、バクテリアが繁殖しやすくなり、涙やけしやすくなってしまうのです。
質の良いフード・食事をあげよう
犬の食事についてはこちらの記事も参考にしてください
せっせと顔を拭く 水を飲んだ後、食事の後
涙やけのケアは蒸しタオルで最低1日2回は顔と目の周りを拭くという話を最初にしましたが、犬が食事をしたあと、水を飲んだ後、口の周りや顔に食事や水が残っていると、ジメジメして細菌が繁殖しやすい場所ができてしまいます。毛が変色してしまう前に、せっせと水や食事がついたら顔を拭きましょう。
食事と飲水の後にも顔を拭く
顔を拭いた後のご褒美も忘れずに。
知っておきたいー涙やけとマイボーム腺の関係
ここらからが実はこの記事の本題です。
蒸しタオルで犬の顔を拭き、食事も水も食器もキレイにしました。それでも犬の涙やけが改善しないときは「マイボーム腺」について考えなくてはなりません。
犬の瞼(まぶた)には、涙の蒸発を防ぐために油分を分泌する「マイボーム腺」がまぶたの縁に並んでいます。犬がまばたきをするたびに、マイボーム腺の出口から油分を分泌し、涙の成分に油分を加え、涙の蒸発を防ぎ、涙が目に張り付く手助けをしています。
<マイボーム線の働き>
・涙の表面に油膜を作り、涙の蒸発を防ぐ
・涙の表面の油膜で、目に涙が張り付く助けをする
・涙が目の表面に均等に広がる助けをする
・瞬きをするときに潤滑油として働く
このマイボーム腺から分泌される油分が不足していると、涙がポロポロあふれてしまい涙やけがひどくなります。
マイボーム腺の機能不全が、涙やけをひどくする
マイボーム腺にしっかり仕事をしてもらうためには?
マイボーム腺が油分をしっかり涙に補うためには、
・血行を良くしてマイボーム腺の仕事を助ける
・温めて出口で詰まった油を溶かし、油を出やすくしてあげる
・質の良い油を使った食事をとる
これらの工夫が必要です。
最初に蒸しタオルので目の周りを温めてから涙を切れに拭き取りましょう、というお話をしたのはマイボームの腺の血行を良くし温めて油を出やすくするためだったのです。
食事の油を見直す、サプリメントを取る
体に悪いギトギトした油を犬が食べていると、マイボーム腺がつまりやすくなり涙やけを起こしやすくなります。
質がよく燃えやすい、体に良い油を積極的に取る必要があります。亜麻仁油やお魚の油、オリーブ油やココナッツオイルなどです。
犬の体に良い油についてはこちらの記事を参考にしてください。必須脂肪酸を摂取することは、犬のマイボーム腺の機能の回復にとても大切です。
目の周りのマッサージとツボ
犬の目の下に<承泣>、目の内側に<睛明>という目を元気にするツボがあります。蒸しタオルで犬の顔を拭くときに意識的に温めるとより効果が高まります。
ものすごい量の涙があふれる、目やにが多い、顔が臭い
・黄緑色の目やにが出る
・まぶたが赤い、白目が赤い
・目やにが多い
・涙があふれる量が多すぎる、拭き取りでは追いつかない
・目周り、顔周りが臭い
・目が開かない
などの症状がみられるときは、
眼瞼内反症、逆さまつげ、鼻涙管閉塞症、角膜炎、結膜炎、アレルギー性皮膚炎など、
病気の可能性がありますので獣医さんに相談しましょう。
まとめ
犬の涙やけの一番のケアは、涙で毛が変色する前に拭き取るというシンプルなものです。1日2回は蒸しタオルで目の周りを温めてから拭きましょう。
涙と一緒に目を守る油を出している<マイボーム腺>の仕事を意識することも大切です。
食事の質、特に油の質には気をつけて、キレイな食器と美味しいお水、質の良い食事をぜひワンちゃんに。